<新日本:G1クライマックス>◇7日◇大阪府立体育会館◇A、Bブロック公式戦9試合◇5500人

 夏男が力強く「巻き返し宣言」した。開幕から3連敗だった天山広吉(40)が9分50秒、井上亘(37)をアナコンダエックスで下し初勝利を挙げた。これ以上の負けが許されない状況で、ようやくつかんだ1勝目。前日6日には左太ももを痛めるなど満身創痍(そうい)の体だが、5年ぶりの復活Vしか見えていない。

 ナニワの暑い夜に「夏男」が、よみがえった。崖っぷちの一戦で、天山が天山らしく勝った。客席から飛ぶ「シュー」の音に応え、モンゴリアンチョップ3連発。最後はアナコンダエックスで井上を絞め上げた。「やっと、やっと初日です。3敗して、次やられたら終わりだし。お客さんに乗せられて、燃えてきた」。4戦目で初めて味わう白星の味を、かみしめていた。

 体はボロボロだ。09年のG1中に悪化させた首や右肩は、手術後の状態に遠い。さらに前日6日の鈴木みのる戦では左太ももを痛め、病院へ直行した。「今日もリングに入った時、ガクッとなった。でもリングじゃ強い天山じゃないと。弱い天山は見せられないですよ」。欠場も頭をよぎる状態で、左脚はファンに分からないようにテーピングされていた。

 G1は歴代2位(1位は蝶野正洋の5度)の3度、頂点に立っている。代名詞だった真夏の祭典も06年以来優勝から遠ざかり、昨年は術後の回復が長引き欠場した。「2年ぶりにG1に戻ってきた。連敗からはい上がるのもモチベーションだし、優勝もあきらめていない。G1夏男、もう一丁、今年も見せてやりますよ」。牛歩のように手にした1勝目。京都生まれの猛牛が、地元関西から頂上へ突進していく。【近間康隆】