<UFC“最強”への挑戦(6)>

 日沖発(28=ALIVE)は、かつて両親にそれとなく聞いていた名前の由来をかみしめていた。「“発”は、発見や発明、発信という言葉につながる。そして物事を始める“スタート”の意味も込められている」。最高峰の舞台に立って間もない今の自分の姿を、言い表していた。

 元修斗世界ライト級、SRCフェザー級王者。「日本でやり残したことはない。もう、日本で戦うことはない」とUFCに主戦場を移した。周囲の楽観視する声が多い中で迎えた昨年10月のデビュー戦。主導権を握れず、僅差の判定2―1で辛勝した。「厳しい世界だと覚悟はしていたが、やはり別物だった」。

 日本人のライト級では大型で優位と言われていた自分より、対戦したジョージ・ループは4センチ高い身長185センチ。初陣を飾る選手から、いきなりアドバンテージを奪うマッチメークをするのがUFCだ。ただ、実績を重ねてきた日沖が感じた違和感は別にあった。

 「日本では試合まで1カ月を切ってから出場が決まることがあるけど、UFCでは3~4カ月前。試合までの過程が大事。相手が3カ月かけて対策を練ったことが対戦して分かった」

 ケージ際や打撃などあらゆる場面で、相手の弱点を徹底的に突く。足を止めて打ち合わず、常に自分に有利な距離感を保たなければならない。「何かに偏っていれば攻略される。進化し続けなければならない」。最高峰の舞台で、日沖は“再出発”を意識した。「日本の格闘技界は今、米国の下に見られている。勝ち上がりたい」。日本の総合格闘技は、死んでいない―。白星デビューのリング上で言い放った言葉を、証明してみせる。【山下健二郎】