WBC世界スーパーフライ級王者の佐藤洋太(28=協栄)が人生逆転で故郷に錦を飾る。10日、都内のジムで始動。先月27日に世界王座を獲得したことで、母校の岩手県立盛岡南高から講演会の依頼が来た。高校時代は茶髪とピアスの不良。先生からは目の敵にされ、卒業式では名前も呼ばれなかった。世界王者になった翌日には警察から職務質問も受けたが、やっと世界王者を実感した。次戦は7月、指名挑戦者で同級1位シルベスター・ロペス(フィリピン)との初防衛戦が有力になった。

 人生が変わった。世界王座を取って2週間。佐藤のもとに母校の岩手県立盛岡南高から講演の依頼が舞い込んできた。「え、オレですか。本当に行っていいんですか」。正直な感想を口にすると、学校側からは「ぜひ来て下さい」と三顧の礼でお願いされた。試合翌日の職務質問とは一転、世界王者を実感できた。

 高校時代はワルだった。入学直後には、自転車を盗んで無期停学。ボクシング部に在籍も、茶髪、ピアスの風貌で、教師からは敵視された。高校3年の国体は学内最上位の3位に入ったが、祝福の垂れ幕はなし。卒業式では名前すら呼ばれなかった。当時の担任からは「おまえはたとえ、ボクシングで大成しても認めない」とまで罵倒された。

 そんな落ちこぼれだった男が、5月8日、成功者として晴れて母校に帰る。その後、盛岡市長、岩手県知事を表敬訪問。「“諸悪の根源”とまで言われたけど、“今に見てろよ”と思ってきた。反骨精神が磨かれました」と、屈辱の過去を払拭(ふっしょく)するように言った。

 次戦は7月、指名挑戦者で同級1位ロペスとの初防衛戦が有力。日本人世界王者8人の「バブル時代」に、最強挑戦者に打ち勝つことで真の王者をアピールしていく。「強いやつは世界にいっぱいいるし、強い相手を食うことが面白い。弱い相手だと、あまり練習しないタイプ。自分はドMですから」。反骨精神で人生を切り開いてきた男は、王者になっても守りに入らない。【田口潤】