WBC世界スーパーフライ級王者の佐藤洋太(28=協栄)が名門ジムの新時代を築く。17日、7月8日に横浜文化体育館で同級1位シルベスター・ロペス(24=フィリピン)と初防衛戦を行うことが都内で発表された。所属の協栄ジムが東京・大久保の自社ビルを売却し、新宿のビル内に移転することも決定。史上最多12人の世界王者を輩出してきた名門ジムの再出発のためにも佐藤が“新協栄ジム”の看板として、まずは最強挑戦者を倒す。
寂しさは隠せない。練習生だった03年から汗を流してきた東京・大久保の協栄ジムの移転。佐藤は「いつか、こういう時が来るとは思っていた。デビュー前からここで練習してきたから」と数々の思い出を振り返るように言った。
バブル時代の91年、現在の鉄筋4階建てのジムは、約15億円の建設費を掛けて建てられた。鬼塚、勇利ら人気世界王者を輩出したが、バブル崩壊から景気は低迷。フィットネスジムの隆盛による会員数の減少などで、近年のジム経営は厳しかった。昨年5月には1階の練習場が韓流ショップに変更された。ジムは2階のみに縮小されていた。
協栄ジムの金平会長は昨年から「自社ビル」の売却を本格的に検討。今月初めに売却先が見つかり、5月初めの移転が決まった。先代で父の故正紀氏から引き継いだビルの売却。感慨に浸り、涙を流した金平会長は「これからのジムの色は、佐藤がつけていく」と、同ジム12人目の世界王者に期待を込めた。
新ジムは新宿のビルの1フロアを賃貸で借りた。現在の2階部分の2倍の100坪と練習場自体は広くなる。佐藤は「そのジムの王者を見て、練習生、会員は入ってくる。新天地でジムを引っ張って、新たな歴史を築いていきたい」と看板としての自覚を見せた。高校時代は茶髪、ピアスで、先生から目の敵にされる存在だっただけに「不良も歓迎。殴って鍛えますよ」と続けた。
新ジムのためにも初防衛戦は負けられない。同級1位ロペスは19勝のうち15KOで5連続KO勝利中のハードパンチャー。「強い相手を倒さないとチャンピオンと名乗れない。スリリングな試合で魅せるボクシングをして勝ちたい」。最強挑戦者を打ち倒すことが、名門再出発の第1歩になる。【田口潤】
◆協栄ジム
元日本フライ級1位だった金平正紀氏が1959年(昭34)の引退後、東京・中目黒に金平ジムを創設。63年、海老原博幸が世界フライ級王座を奪取。その後、協栄ジムに名称変更。西城正三、具志堅用高、鬼塚勝也ら世界王者を次々と輩出した。今年3月の佐藤で史上最多を更新する12人目の世界王者を誕生させた。91年から現在の東京・新宿区大久保に移転。99年3月の金平氏急逝後は長男桂一郎氏が会長を引き継ぐ。

