【上海(中国)28日=小谷野俊哉】IGFのアントニオ猪木会長(69)が現地で会見し、新団体「上海愛武(アイウー)」の設立を発表した。人口13億5000万人の中国のマーケットにプロレスを根付かせ“中国の力道山”になる決意を明かした。7月7~12日に開催される上海国際武術博覧会でプレ旗揚げ戦としてプロレスを披露、日中国交正常化40周年記念として9月にプロレスにキックボクシングをまじえた旗揚げ戦を目指す。

 猪木会長が中国市場に注目したのは、90年9月の新日本のハルビン遠征からだ。95年の北朝鮮・平壌遠征で、プロレスを知らない19万人の観衆を集め、アジアのマーケット開拓を構想。ついに中国でのプロレス団体設立にこぎつけた。師匠・力道山が、1953年(昭28)に日本プロレスを設立して、プロレスブームを巻き起こした再現を中国で狙っている。人口1億3000万人の日本の10倍以上の市場は大きな魅力だ。

 猪木会長は「やっとスタートラインに立った。中国政府も認めてくれているし、スポーツを通じて平和友好に貢献したい」。昨年5月に構想を発表。準備を進め今年4月1日付で上海にIGF上海支社として「上海愛武文化伝播有限公司会」を登記した。中国人の鄒世俊会長、梁健星社長に運営を任せ、猪木会長は“人寄せパンダ”に徹する。上海には現在、約20万人の日本人が滞在。猪木会長は「まずは上海の日本人を相手に、8000人規模の会場で大会を行いたい。そこから中国の人にプロレスを知ってもらって、北京、ハルビンなど各地に広めていきたい」と自信を見せた。

 ブームを巻き起こすには、中国人選手の発掘が急務だ。K-1を中国に招聘(しょうへい)した武道団体・武林風と提携してスカウト活動を行っている。「力道山先生が、私やジャイアント馬場さんを見いだして育ててくれたように、柔道や少林拳の選手をプロレスラーに鍛え上げたい」。ゲストとして招かれた泉裕泰上海総領事も「スポーツにとって魅力的な市場。9月に国交回復40周年記念の大会を」と全面バックアップを約束。“燃える闘魂”アントニオ猪木が、中国市場制覇へ燃え出した。