高校生史上初のアマ7冠を獲得した井上尚弥(19=大橋)が、異例の公開プロテストで日本王者を圧倒した。10日、東京・後楽園ホールの興行内で日本ボクシングコミッション(JBC)のプロB級テストを受検。日本ライトフライ級王者の黒田雅之(25=川崎新田)と3回のスパーリングを行い、左右の連打で何度もコーナーに追い詰めて大物ルーキーぶりを証明した。今日11日の受検結果発表で、合格は確実。今秋予定のプロデビューへ、早くも好スタートを切った。

 怪物が、ベールを脱いだ。ゴングとともに、井上はプロデビュー前のアマ選手とは思えない猛攻に出た。日本王者に臆することなく、左右のフック、ボディーブローを矢継ぎ早に打ち込む。1300人の観衆から驚きの声が上がった。黒田のジャブを寸前でかわすと、すかさずカウンターの右ストレート。何度もコーナーへ追い込み、もう少しでKOか-と思わせる“圧勝劇”を演じて見せた。

 興行内で一般ファン1300人が見守る異例の公開プロテストに臨んだ。ボクシングの聖地に初めて立った井上は「緊張して、自分のボクシングができませんでした」と反省したが、本来、勝敗を決める場ではないのにもかかわらず、日本王者の黒田に「しっかりやれ」「おまえの方が弱いのか」などとヤジが飛び、場内アナウンスで自粛を呼び掛けなければならないほどだった。黒田も「距離の取り方がうまく、パンチの踏み込みが鋭い。僕より全然上。日本ランカーより強い」と実力を認めた。

 通常はC級(4回戦)からキャリアを積むが、アマ実績を評価されてB級(6回戦)を受検した井上。さらに陣営は特例による高卒ルーキー史上初のA級(8回戦以上)プロデビューを計画。テスト終了直後のリング上で「井岡(一翔)さんの記録を塗り替えたい」と史上最速6戦目での世界王者奪取を誓った井上。怪物伝説が、幕を開けた。【山下健二郎】

 ◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。相模原青陵高1年でインターハイ、国体、全国選抜と3冠。2年で国体、3年でインターハイ、プレジデント杯、全日本選手権も制覇。アマ通算75勝(48KO・RSC)6敗。163センチの右ボクサーファイター。