新日本の野人・中西学(45)が、492日ぶりに復活する。昨年6月4日の京都大会で、原爆固めで首を痛め中心性脊髄損傷の重傷を負った中西が、8日の東京・両国国技館大会で1年4カ月ぶりに試合出場する。第1試合で永田裕志(44)ストロングマン(40)と組み、矢野通(34)飯塚高史(46)石井智宏(36)の悪党軍団と対戦する。一時は再起不能とも言われた男は「袋だたきにあうためにリングに戻るんじゃない。新しい中西学を見せる」と言い切った。

 東京・野毛の新日本道場。ビルドアップされた体の中西が乗った体重計は、118キロを指した。

 昨年6月に「寝たきりもある。よくて車椅子」の宣告。プロレスラーとして「再起不能」の烙印(らくいん)だ。「怖かった。だから何も考えずに、復帰できるんだと信じてリハビリに励んだ」と振り返った。

 ちょうど1年前の10月7日に東京で手術。骨化して食い込んだ靱帯(じんたい)を、頸椎(けいつい)から引き剥がした。「10日たって道場でリングに立った。ロープにつかまりながらで、右足は曲がらなかった。だけど、リングシューズを履いてマットを踏み締めて気持ちが変わった」。11月に退院、リハビリを続けながら道場へ通った。「走りたいけど筋肉がついていかない。後遺症で、脳からの指令が届かない。素早く動こうとすると体が固まった」。1歩、1歩、ゆっくりと復帰を目指した。

 道場に入って準備運動のストレッチ。けがの前は5分で済んだが、今は2時間に及ぶ。以前の24倍の時間をかけて、やっと通常の練習に入れる。「再起不能と言われたんだから、じっくりやりさえすればスタートラインに立てるのは幸せ。この準備運動は死ぬまで続ける」と笑顔を見せた。

 新日本は中西の復帰戦のためだけに、ストロングマンを米国から呼び寄せた。そして20年間、苦楽を共にする同期の永田。永田のキックを道場で受けた。「重い。ズシンと来る。相手もプロだから当然、首を狙ってくる。それに耐えられなきゃね。まず復帰戦のことだけを考える。やっと現実に戻れるんだから」と表情を引き締めた。【小谷野俊哉】