WBC世界バンタム級王者の山中慎介(30)がV2で東日本大震災の復興支援を継続する。ダブル世界戦(3日、ゼビオアリーナ仙台)の調印式、計量が2日、仙台市内で行われた。同級7位トマス・ロハス(32=メキシコ)に勝てば、開催地・宮城のみそ、しょうゆ製造業・今野醸造(宮城・加美町)から「山中チャンピオンみそ」が発売される。売り上げの一部は震災孤児への寄付金になる。山中は震災直後から支援活動を続けるだけに必勝を期した。計量は同フライ級王者五十嵐俊幸(28=ともに帝拳)を含め、全員がパスした。

 負けられない。計量前の調印式で、山中は「しっかりポイントを取って、チャンスがあればKOを狙う。とりあえず、必ず勝ちます」と口もとを引き締めた。計量をパスすると、1・5センチ身長の高いロハスと向かい合うと、背伸びをし、目線を同じにして、にらみ合った。勝利への強い意志が伝わってきた。

 東日本大震災直後、スコップを被災地に送った。5月には仙台市でがれき撤去のボランティアに従事。そのとき、地元のみそ、しょうゆ製造業・今野醸造(宮城・加美町)の関係者と交流を深めた。同醸造は勝てば「山中チャンピオンみそ」の販売を決定。売り上げの一部を震災孤児に寄付することにした。

 創業100年以上の同醸造も震災の被害を受けた。みそのタンクが落下し、しょうゆタンクも横倒しになった。大変な状況だったが、震災直後から震災遺児に寄付金を送り、仮設住宅にしょうゆ、みそを提供してきた。それだけに、山中のボランティア精神に感銘を受け、今回の新製品につながった。

 過去にもスポーツ選手関連の食品が考案されたが、みそはめずらしい。「山中チャンピオンみそ」は今年の全国品評会に出したもので、こうじの割合が多めで甘口。同みそとともに、仙台みそ、吟醸しょうゆ、塩こうじ、田楽みそをセットで2500円。そのうち250円が震災孤児の寄付金に回るという。

 自らの名前のついたみそが販売され、それが復興支援にもつながる。山中は「頑張ろうとの気持ちが増しますし、逆に元気をもらいました」とあらためて必勝を期した。【田口潤】