<東洋太平洋ウエルター級タイトル戦12回戦>◇19日◇東京・後楽園ホール

 王者渡部あきのり(27=協栄)が、挑戦者で同級1位のプラウェート・シンワンチャー(タイ)に12回判定で勝ち、4度目の防衛に成功した。渡部は5回にダウンを奪い、強打をもらわない冷静なボクシングで3-0の大差の判定だった。

 5回に左ストレートでダウンを奪い、終始攻勢に試合を進めた渡部のボクシングは世界を狙う成長の証しだった。試合を観戦したWBC世界スーパーフライ級王者佐藤は「倒したい。早く終わらせたいがこいつの弱さ。それを自覚して戦っていた。見ていてうるっときた」と成長を認めた。

 日本タイ記録の15試合連続KO記録を持つ渡部。この試合も倒せそうで倒せない、そんな展開でヤジも飛んだ。しかし渡部は「最後までパンチが見える距離にいた。負けたくなかった」と打ち明けた。この日、家を出るときに絵里子夫人(30)から「頑張って」と言われたが、その声が震えていた。家族を背負い、負けられない思いが募った。

 シンワンチャーはWBC世界スーパーライト級1位でもあり、大差で勝ったことで世界への道も開ける。金平会長は「これから世界ランキングに入って、(世界戦は)タイミングをみて」とタイトル戦を目指す意向を示した。【桝田朗】