前WBA&WBC世界ミニマム級王者井岡一翔(23=井岡)が、日本人最短11試合目で2階級制覇を達成した。WBA世界ライトフライ級5位ホセ・ロドリゲス(23=メキシコ)を6回2分50秒でTKOで倒し、同級王座を獲得した。22試合目で世界2階級王者となった叔父弘樹会長(43)らを上回るスピード記録で、「2階級連続KO獲得」は日本人初。本来の階級に戻って技術もパワーもさえ渡り、強さを見せつけた。井岡の戦績は11戦全勝(7KO)となった。

 力が違う。スピードが違う。センスも違う。井岡が相手を圧倒する連打で、大みそかの観客を酔わせた。6回だ。右ストレートで、この日2度目のダウンを奪うと、覇気がなくなったロドリゲスにとどめを刺す。「ダメージが蓄積してしゃがみこんだ感じだったし、相手の気持ちが折れてた。ここで終わらせようと思った」。最後は右アッパーから右ストレートで決めた。

 世界戦では自身初めて右で倒した。叔父弘樹会長らを上回る日本人最短11試合目での2階級制覇を鮮やかに達成。「大みそかに2階級制覇に挑むチャンスを頂いて必ずとるつもりだった。いい結果を出せて良かった」。両腕を突き上げ、声援に応えた。

 同じリングで奮闘した親友に勇気をもらった。興国高の同級生でジム同僚の宮崎が、直前の試合で勝って世界をとった。中学3年で知り合い、高校ではともに大好きなボクシングに明け暮れた。学校の練習だけでもきつく苦しいはずが、終了後に互いの家に寄ってさらにミット打ちを重ねたこともあった。そんな友が、夢の世界王者に輝き「力をもらいました。つないでもらったバトンは落とせないと思った」。1回1分50秒過ぎ、左ボディーでいきなりダウンを奪う。98秒でKO勝ちした1年前の大みそかを再現するかのようなスタートで勢いづいた。試合後は宮崎と2人でリングでベルトを巻いた。「最高の思い出」と目尻を下げた。

 本来のライトフライ級に戻り、パンチの威力も増した。父一法トレーナーの方針もあって、大きな負荷をかける筋トレはしない。軽い負荷で数をこなすのが井岡流だ。さらに古風とも言える手法も使う。中学時代から毎年行う瀬戸内海合宿では、たこ釣り用の重い網を何度も引き上げ全身を強化。高校時代は、木製ハンマーで1000回以上タイヤをたたき腕力もつけてきた。力強い戦いぶりに弘樹会長も「より一層パワーがついた」と目を細めた。

 無傷11連勝で2階級制覇を果たしても、満足していない。「努力は必ず報われるわけではないけど、僕が努力すれば夢はかなうと証明し続けたい」。4階級制覇が目標の井岡には、まだ通過点。これからも休むことなく戦い続ける。【木村有三】

 ◆井岡一翔(いおか・かずと)1989年(平元)3月24日、大阪・堺市生まれ。興国高では史上3人目の高校6冠。08年に東農大を中退してプロ転向。国内最速となる7戦目で世界王座を獲得。12年6月に日本人初の2団体王者。164センチの右ボクサーファイター。