勝利目前の12回前、佐藤洋太(28=協栄)は新井史朗トレーナーに「1回ダウンしてもポイントで勝てますか」と聞いた。完璧に勝ちたい新井トレは、最終回にあえて残り時間を告げなかった。それでも、佐藤はコーナーに赤穂亮(26=横浜光)を誘い込み、打ち合った。「赤穂君のいいところを引き出したかったのもあるが、実際はカウンターで倒したかった」。そんな、言葉が出てくるほど、佐藤のワンサイドゲームだった。

 同じ階級で互いに意識し、過去に対戦話が何度も流れた因縁。決着をつけるために、赤穂の出はなをくじく左ジャブで8回までで試合を決めた。512回のスパーをこなし、実戦で磨いてきた「マジカルボックス」佐藤の独特のボクシングを遺憾なく披露した。

 2度目の防衛を果たし佐藤は「これからどんどん勝って協栄ジムを盛り上げていきたい」と今後の抱負を口にした。次期防衛戦の相手について、この日WBAスーパーフライ級新王者となった河野の名前を出した。「河野さんがベルト持っているならつぶし合いましょう。ベルトが2本もらいたいんです」とWBC、WBAの王者統一戦への希望を口にした。進化を続ける28歳は、2013年も立ち止まらない。【桝田朗】

 ◆佐藤洋太(さとう・ようた)1984年(昭59)4月1日生まれ、岩手県盛岡市出身。マイク・タイソンに憧れて中学3年でボクシングを始める。盛岡南高3年時の国体3位、インターハイ5位。04年2月のプロデビュー戦は黒星。10年5月日本スーパーフライ級暫定王座獲得。同9月に正規王座に。今年3月、WBC世界同級王座を獲得。171センチの右ボクサーファイター。