<プロボクシング:50キロ契約10回戦>◇5日◇東京・後楽園ホール

 前WBA世界ミニマム級王者の八重樫東(29=大橋)が再起戦をKO勝利で飾った。元WBCアジア王者サンムアンローイ・ゴーキャットジム(タイ)に9回2分52秒KO勝ちした。昨年6月に井岡一翔との世界団体王座統一戦に敗れて以来、約半年ぶりの実戦。2階級上のフライ級(50・8キロ)とほぼ同じ契約体重の試合をクリアしたことで、年内の世界2階級制覇に1歩前進した。

 2階級制覇へ、新境地を開拓した。八重樫のスタイルは、両目を腫らした井岡戦のように、前に出続けるファイタースタイルが身上だが、この日は違った。9回に左ボディーアッパーでKOしたものの、それまでは足を使う作戦を徹底。「今日はパンチをもらわないことを考えた」と狙いを口にした。

 昨年12月、元世界2階級制覇王者長谷川穂積の試合をテレビ観戦。好戦的スタイルの元王者は「防御7で攻撃3の面白くない試合」と自嘲しながら、距離を取ってガードを固めた。階級アップを図る今後へ、防御の重要性を痛感していただけに長谷川のスタイルに共感。長谷川からも「長くボクシングを続けるためにも、防御を意識した方がいい」とアドバイスされたため「どんなに観客から不満が出ても冷静に」とアウトボクシングを貫いた。

 昨年6月の井岡戦以来、約半年ぶりの再起戦。普段、リングまでの入場時は、元世界6階級王者パッキャオのTシャツを着るが、この日は井岡戦で両目を大きく腫らした写真の入ったものを着用した。あの屈辱を忘れないとの強い思いがそこにはあった。今までのミニマム級から2階級上のフライ級とほぼ同じ体重の再起戦でKO勝利。井岡と再戦でリベンジを果たすためにも、年内に2階級制覇を実現する。【田口潤】