56年ぶりのヘビー級2代目日本王者は、和製の元K-1戦士か、ウガンダ出身の元世界挑戦者か。日本同級王座決定戦の計量が、24日に都内の日本ボクシングコミッション(JBC)で行われた。同級1位藤本京太郎(27=角海老宝石)が101・5キロ、同級2位オケロ・ピーター(41=緑)は110・2キロだった。両者は新調されたベルトを前に、王座獲得へ静かに火花を散らした。決戦は今日25日に東京・後楽園ホールでゴングとなる。

 王座復活にふさわしいベルトが用意された。JBCが5月にタイの業者へ発注し、2週間前に届いた。装飾部分は従来の強化プラスチック製が金属製になった。重さは倍の約3・5キロで、ベルトも30センチ長くした。業者はWBC、WBOも作製する老舗。25万円以上のヘビー級らしい重みを感じさせた。

 光るベルトに両者の視線もくぎ付けになった。ともに視線は合わせなかったが、藤本は冷静に思いを口にした。「僕が転向したから、このタイトルができたと言ってきた。死ぬ気で勝つ。1ポイント差でも、汚くても勝てばいい。取るべき者が取り、勝つべき者が勝つ」。

 昨年にWBC15位で日本人初の世界ランカー入りも、東洋太平洋王座挑戦では5回KO負け。屈辱を味わったが「ボクシングで生かされている」と熱は衰えない。09年に日本人で初めてK-1第2代ヘビー級トーナメントを制し、アーツをKOで初防衛。異種格闘技で2本目のベルトへ、並々ならぬ執念を燃やす。

 今年からエディー・タウンゼント賞の積田トレーナーにつく。4月に7回TKOで再起し、5月には米ラスベガスで修行。今回はデビュー時に近い101・5キロで仕上げた。「一番動きやすい。ベスト体重に行き着いた」と、足を使って勝利を狙う。

 ピーターは言葉少なも自信をうかがわせた。「いい試合をして勝つしかない。当たればKO。ジャブを使っていく」。97年に来日し、東洋太平洋王座は9度防衛。7年前とはいえ、WBCで世界挑戦して判定負けの実績を持つ。今回は体重を10キロ落とし、藤本を捕まえる足を鍛えてきた。

 半世紀の空白を埋める時が来た。日本人は欧米に体格で劣り、人材難から定着しなかった。ヘビー級に耐えうる体格の者は、大相撲など他の格闘技に流れてしまう。90年代に西島洋介山が唯一のヘビー級で話題になったが、実質はクルーザー級だった。

 オーディションを開催したジムもあったが、選手が定着しなかった。志願者がいても、練習相手が不足し、実力アップもできない。海外で修行するにも資金的問題などがある。

 日本人も大型化し、日本プロボクシング協会が大橋会長体制になって推進を図った。09年に日本ランクを空位ながらも再度設置。ようやく4人のランカーがそろった。まだまだ層の薄さはあるが、日本にヘビー級王者が復活する日が来た。【河合香】