プロレスラー武藤敬司(50)が、仲間とともに新たな航海に出る。今日8日、7月に立ち上げた新団体「W-1」の旗揚げ大会を東京ドームシティホールで開催する。「しがらみのない、真っ白なキャンバス」に何を描くのか。後ろをついてきた後輩たちに、自分を超えるレスラーになってほしいという望みをかける。多くの夢をファンに届けてきた男が、新たなリングに込めるメッセージを熱く語った。

 化身「グレート・ムタ」、演出の工夫など独創的なアイデアでファンを魅了し続けてきた。根底に流れるものは今回も変わらない。

 武藤

 驚かせる、説得する、泣かせる、感動させる。それがプロレスだと思う。ただ、今回はしがらみがないし、何やっても許されるってのはあるな(笑い)。

 旗揚げ大会は、対戦相手がすべて「X」というカードにもかかわらず、チケットは完売。注目度も高い。

 武藤

 この期待をどう膨らませられるか。半沢直樹じゃないけど、10倍返しにしないとな。俺の夢は「1人でも多くの人にプロレスを見てもらうこと」。W-1でそれを実現したい。

 掲げる海外戦略に向けても具体的に動き始めた。

 武藤

 (米国)TNAとは若い選手の交流をしていこうと話をした。W-1、TNA、メキシコ、ヨーロッパの4団体の持ち回りで大会を行うというプランも出てきている。

 「天才」「日本マット界の至宝」と呼ばれ、来年プロレス生活30周年を迎える武藤が、プロレスでやり残したことがある。

 武藤

 俺を超える選手をつくれていない。難しいけど、それはW-1のテーマにもなってくる。1つ言えることは、もっともっと「考える」ってことだ。俺自身も新日本だけにいたら小さくまとまっていたと思う。WCWに行ったり、全日本で経営という角度からもプロレスを考えた。リング内だけだときっとスターにはなれないんだよ。リングより体育館、団体、プロレス界と客観的に考えられるやつの方がいいプロレスが出来ると思う。今回はいい機会。選手にはどんどん考えてアピールしてほしいな。

 「選手の受け皿になるようなものをつくる」。6月の分裂騒動の渦中で語った言葉が形になった。愛情が詰まったリングで「プロレスLOVE」を見せつける。【奥山将志】

 ◆WRESTLE-1

 レッスルワン。7月に武藤が設立したプロレス団体。船木誠勝、カズ・ハヤシ、近藤修司ら6月末で全日本を退団した選手が所属。「W」にはWIN(勝利)、WORLD(世界)、WRESTRING(レスリング)などの意味が込められている。