<全日本:長野大会>◇24日◇長野・ビッグハット◇1743人

 10月に悲願の3冠ヘビー級王座を獲得した曙(44)がジョー・ドーリング(31)を破り、初防衛に成功した。両者リングアウトで試合が止められ、再試合となる異常事態も、集中は切らさなかった。必殺のヨコヅナインパクト(脳天くい打ち)を決めると、2分14秒、体固めで勝利。勢いを加速させる元横綱が、強さを見せつける完勝で防衛ロードをスタートさせた。

 場外カウントが聞こえないほど集中していた。両者リングアウトのゴング。会場に響き渡る大ブーイングで、曙は冷静さを取り戻した。「もう1回やらしてくれ」。懇願した思いが通ると、そこからは2分14秒の「電車道」だった。210キロの体重を乗せたボディープレス4連発で一気にドーリングを追い詰めると、完璧なヨコヅナインパクトで、今度こその3カウントを奪ってみせた。

 「(王者に)なるよりも守る方が難しい」。追われる立場を知るだけに、防衛ロードに周到な準備で臨んだ。10月にベルトを手にした後の長いオフも、緊張の糸は切らさなかった。わずか2日間の休みでトレーニングを再開。「やらないと自信がなくなる」と前を見続けた。練習の負荷を以前より上げ、他団体のリングで試合勘を落とさないように努めた。

 完璧なV1達成で満面の笑みを見せたのもつかの間。「毎日が勉強です。まだまだ横綱相撲ではないです」とかぶとの緒を締め直した。9月の王道トーナメントから、団体に所属するヘビー級戦士を立て続けに連破。次期挑戦者には「個人的な意見」としながらも、未対決の大森隆男を希望した。曙は、全日本マット完全制圧に突き進む。【奥山将志】