日本人2人目の2団体統一王者を目指すIBF世界スーパーフライ級王者・亀田大毅(24=亀田)が、試合前日に水を差された。今日3日のトリプル世界戦(大阪・ボディメーカーコロシアム)の前日計量が2日、大阪市内で行われ、対戦相手のWBA同級王者リボリオ・ソリス(31=ベネズエラ)が計量に失敗。再計量でも規定に届かず、自ら水を飲むギブアップで、王座を剥奪された。大毅が勝利すれば統一王者となるが、体重差未知数のリスクある試合になる。

 計量器から下りたソリスが突然、ペットボトルの水を口に運んだ。響き渡る「飲んだらあかんぞ!」という周囲の制止の声。それを振り払うように、喉を鳴らしながら、乾ききった体に約300ミリリットルを一気に流し込んだ。制限時間まで残り約1時間。リミットまであと1・1キロという数字に、ソリスの心は折れた。「金なら払ってやる」と大声でまくし立てた。自動販売機で買った水やコカ・コーラをがぶ飲みするなど、王者としてあるまじき醜態をさらし、「チャンピオン」の称号を奪われた。

 大毅とともに受けた午前11時からの公開計量では、52・1キロのリミットに対し1・4キロオーバーで、2時間以内の再計量が義務づけられた。1時間後、ソリス1人のために行われた2度目も53・2キロ。気温が低い中でのランニングでは、300グラム落とすのがやっとだった。

 水分を取って落ち着きを取り戻すと「もう減量はしない。日本の寒さでうまくいかなかった」と声を絞り出した。「たとえこれから1時間やっても汗はかけない。もうできない」と続け、その後は現実を理解したのか涙を見せた。

 日本で2回目となる王座統一戦を前に起きた事態に、両陣営、WBA、IBF、JBCの関係者が即座に集結。約30分間協議し、WBA側は「大毅選手が勝てばWBA王者として認定し、負ければ空位とする」と説明し、ソリスに罰金を科すとした。IBF側は「大毅選手が負けた場合はタイトルは空位となる」と説明。主要4団体で唯一義務づけている当日計量(増量制限10ポンド=約4・5キロ以内)も、大毅のみが行うと発表した。

 亀田ジムの嶋聡マネジャー(34)は「こちらはきちんとやっている。正々堂々とした試合をやらせたかった。ゴタゴタを吹き飛ばすような試合を大毅にしてほしいとしか言いようがない」と話した。

 先に会場を後にしていた大毅は、同日夜に公式ブログを更新。「勘弁してほしい。こんな舐めたやつには絶対に負けません。油断せんとしっかりと自分のボクシングして統一チャンピオンになります。明日は怒りの鉄拳でございます」と思いを表現した。

 大毅にとってはIBF王座を守り、WBA王座を狙う戦いであることに変わりはない。ただし、戦意を喪失しているとはいえ、実質的に体重の制限がなくなった相手との試合はリスクを伴う。4日間の絶食を含み、11キロの過酷な減量を乗り越え「いつも通りの自分のボクシングをすれば倒せる。きれいにKOで締められればいい」と話した大毅が、心の強さを見せつける。【奥山将志】

 ◆主なルール

 採点は10点法でフリーノックダウン制。4回までに偶然のバッティングなどで続行不可能な場合は引き分け。5回以降は採点。バッティングで負傷した場合、故意なら負傷のない選手から2点減点。当日計量も行い、10ポンド(約4・5キロ)以上オーバーしてはならない。