WBC世界バンタム級王者・山中慎介(31=帝拳)が、憧れの舞台で結果を出す。明日23日に行われる同級3位シュテファーヌ・ジャモエ(24=ベルギー)との6度目の防衛戦を控え、21日に大阪市内のホテルでの調印式に出席。中学生の時に魅了された、辰吉-シリモンコンの伝説のタイトル戦と同じ大阪城ホールでの試合に、思いを巡らせた。意欲を燃やす海外でのビッグマッチ実現のためにも、この一戦にすべてをかける。

 試合を2日後に控え、調印書にサインした山中は、高ぶる気持ちを抑えるように言葉に力を込めた。「中学の時に見たあの試合は、はっきり覚えています。何回も映像を見直しました。その会場で自分ができるのは、最高の幸せです」。

 「あの試合」とは、山中がボクサーを志すきっかけの1つともいえる試合だ。大阪城ホールで行われた97年11月のWBC世界バンタム級タイトルマッチ。辰吉が王座を獲得した姿に胸を打たれ、中学の卒業文集に「WBCの世界チャンピオンになる」と書くほど大きな衝撃を与えた。

 思い出の会場はすでに超満員確実だ。地元・滋賀では応援団用のバス24台が準備されるなど、事前に用意されたチケット約1万4000枚は完売。会見後の写真撮影で、向かい合った挑戦者の目を10秒以上も凝視すると「最高の舞台でメーンに見合った試合をします。自信はあります」。注目が高まる一戦に向け、気合を入れ直した。

 夢への「予行演習」でもある。常々、米ラスベガスのMGMグランド・ガーデンアリーナなど、海外でのビッグマッチに強い意欲を示している。実現に向け、「この試合を勝たないと始まらない」と、しっかりと結果でアピールする構えだ。

 残り数百グラムとなった減量も、適度に食事を取りながら最終調整を行うなど、コンディションは万全。辰吉と同じ緑のベルトを保持してたどり着いたリングで、今度は山中が強さを見せつける。【奥山将志】

 ◆主なルール

 採点は10点法でフリーノックダウン制。4回までに偶然のバッティングで続行が不可能な場合は引き分け。5回以降は採点。バッティングで負傷の場合、故意なら負傷のない選手から2点、偶然なら1点減点。4回、8回終了後に途中採点が公開。日本製8オンスグローブを使用。レフェリーはエクトル・アフー(パナマ)、ジャッジはノパラット・スリチャロン(タイ)、ティモシー・チータム(米国)、ファン・ペラヨ(メキシコ)。

 ◆辰吉-シリモンコン戦VTR

 97年11月に行われたWBCバンタム級タイトル戦。世界戦3連敗中の辰吉が、16戦無敗の王者・シリモンコンに挑戦した。序盤は王者のジャブに苦戦も、5回に強烈な左ボディーで最初のダウンを奪取。6回には王者の捨て身の反撃を受けるなど一進一退の攻防を展開。7回も左フックをまともに浴びピンチを迎えたが、接近戦での左ボディーで2度目のダウンを奪う。どうにか立ち上がった相手に連打を集め、同回1分54秒、TKOで勝利。圧倒的不利の予想を覆し、約3年ぶりに王座返り咲きを果たした。