<プロボクシング:IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇23日◇大阪城ホール

 元世界2階級王者の長谷川穂積(33=真正)が、王者キコ・マルティネス(28=スペイン)に7回1分20秒、TKO負け。3年ぶりの世界戦は7回に2度のダウンを喫して、レフェリーが試合を止めた。

 長谷川の家族は、敗戦を静かに受け入れた。元プロボクサーの父大二郎さん(58)はリングで一礼する息子に拍手した。「一生懸命やって負けたから。ありがとう。ここまで楽しませてもらった。2回のダウンでスタミナがなくなった。最後まで持たないなと、あそこで腹をくくりました」。

 22日の前日計量後、息子から電話を受けた。「ろれつが回っていなかった。エッと思った。変な予感がした。以前はなかったこと」。小2の息子にボクシングを教えてから25年。軽やかなフットワークと鋭い連打でV10を達成したバンタム級時代の姿には戻らなかった。「昔のようにはできなかった。勝っても引退してほしいと思っていた」と息子の体を気遣った。

 泰子夫人(34)は、2回のダウンで下を向きかけたが「私があきらめてはいけない。初めて声を出して『頑張れ』と言った」。運命の7回、崩れ落ちた夫を見て首を左右に振り「もういい、もういい」とつぶやいた。「お疲れさまと言いたい。あとは体が心配なので」と口にした。最後は「もう、こんなこともないかもしれませんね」。ボクサーの妻として、今後を予感しているように言った。【益田一弘】