<プロボクシング:フライ級10回戦>◇16日◇東京・後楽園ホール

 元世界2階級王者でWBAフライ級5位の井岡一翔(25=井岡)が、再起戦を勝利で飾った。同級14位パブロ・カリージョ(26=コロンビア)を3-0の大差判定勝ち。KOで仕留めることはできなかったが最後まで攻撃の手を緩めず、壮絶な殴り合いを制した。大みそかに予定する世界3階級制覇再挑戦へ、自信を取り戻した。井岡の戦績は15勝(9KO)1敗。

 燃えた。熱くなった。クールな井岡が、鬼の形相で殴り合った。

 「気持ちで負けたくなかった」。歯を食いしばって応戦してきた世界ランカーの難敵カリージョを、ひるまず攻め続けた。KOで倒せなかったが、3人のジャッジとも6点差以上をつける大差判定勝ち。「最後倒したかったけど、勝てて良かった。勝てたことで次につなげられる。自信につながります」。珍しく額に傷が残る顔で、再起戦の勝利を喜んだ。

 最終10回の終了ゴングが大歓声で打ち消されるほど、聖地・後楽園ホールの観客も大熱狂した。「倒すことも大事だけど、世界を取るには大差判定で勝つことも大事。盛り上がって良かった」。トレーナーの父一法会長も合格点を与えた。

 痛恨のプロ初黒星を糧にした。3階級制覇を目指した5月のIBF世界フライ級戦で判定負け。だが、1度の負けで夢を手放すわけにはいかない。「今まで通り試行錯誤して、悩んで、やっていくだけ」。強い気持ちで復活を期してきた。

 元世界5階級制覇の伝説王者シュガー・レイ・レナード(米国)の映像を見て、高速ステップインを頭に刻んだ。この日は、前後左右に動いてボディーやアッパーを上下に打ち分け、成果を見せる場面もあった。

 次戦は大みそかの3階級制覇再挑戦が濃厚だ。フライ級戦線は強豪ぞろいで、5日に八重樫を圧倒したWBC王者ゴンサレスや、前回苦杯をなめたIBF王者アムナトらが待つ。井岡は「自分の体にベルトがないとしっくりこない」と言った。もう1度、世界の舞台に立ち、悲願をかなえる。【木村有三】