総合格闘技の世界最高峰UFCに初の日本人女性ファイターが登場する。UFCファイトナイト・ジャパン2014は今日20日、さいたまスーパーアリーナで開催される。中井りん(27)はアジア人として初めてUFCと契約。デビュー戦でいきなり世界ランク2位のミーシャ・テイト(28=米国)に挑戦する。19日には同会場で前日計量も済ませ、歴史的一日へ臨戦態勢も整った。

 中井は、前日計量に戦国武者のコスプレで登場した。6月26日の日本大会開催会見ではマドンナの「ライク・ア・バージン」をイメージした花嫁衣装、17日のメディアデーには「正装」という女子高生風の制服姿で登場。そして、今回は甲冑(かっちゅう)の下にハイレグのビキニ姿で計量台に乗るなど、サプライズを用意。ジーンズにタンクトップというラフな服装のテイトに先制パンチを浴びせた。

 UFCが、最大のマーケットとして重視するアジアで初の女性ファイターとして契約したのは、コスプレではなくその実力を高く評価したからだ。総合格闘技の戦績は、17戦で16勝1分けという無敗の強さ。12年にはパンクラス女性部門のバンタム級で優勝した。「アジアの女性で初めてなので、道を切り開きたい」と意気込んでいる。

 中井は、高校まで柔道で活躍した。中学時代には全国大会で5位になり、愛媛から東京・東海大高輪台に進学。2年時に全国選手権団体で3位に入った実績を持つ。柔道で大学に進学したが故障のため1年で中退。新たな目標として見つけたのが総合格闘技だった。

 修斗などプロ格闘技で活躍した宇佐美文雄コーチ(45)と出会い、当時宇佐美氏が愛媛・今治市に開設したばかりのジムで、二人三脚の歩みが始まった。06年10月、19歳でのデビュー戦で、総合格闘技歴5年以上のベテラン選手に、1回右フックで鼻骨骨折させKOデビュー。以降、17戦中8試合が1回KO。12試合でKOという圧倒的な強さで、UFCに上り詰めた。宇佐美コーチは「1番は性格。気が強く、何者にも物おじしない。筋肉も柔らかいし、この子は絶対に強くなると思った」と話す。

 アジア人初の女性ファイターのデビュー戦にUFCは、世界ランク2位のテイトをぶつけてきた。ホワイト社長は大会開催の会見で「もし彼女がミーシャに勝てば、世界のトップレベルに入る、非常に重要な試合」と期待感を表した。「自分のことだけじゃなく、いろんなことを背負って戦わなきゃいけない。プレッシャーもあるけど、ベストを尽くしていい試合をするだけ」と中井。勝って勝利のバック転が飛び出すか。中井-テイト戦から、日本総合格闘技界の新たな歴史が始まる。【桝田朗】

 ◆UFC

 93年に米国で創設された総合格闘技団体。01年にズッファ社が買収し、米アスレチック・コミッションの承認を受けるなど全米で大会を開催するようになった。07年には日本のPRIDEを買収、11年には米国のストライクフォースを買収。リングは直径8メートルの八角形で高さ1・83メートルのフェンスで囲まれる。通常5分3回、タイトル戦は5分5回で試合を行う。勝負はKOや関節技での1本、判定などで決まる。

 ◆テレビ放送

 大会の模様はWOWOWが20日午後2時30分から試合終了まで独占生中継する。