ボクシングのWBC世界バンタム級王者で、22日に7度目の防衛戦を控える山中慎介(32=帝拳)が20日、都内のホテルで行われた調印式に出席した。挑戦者の同級1位スリヤン・ソールンビサイ(25=タイ)側から、グローブの色が違うことにクレームを付けられる場面もあったが、冷静に対応した。陣営はKO防衛に成功した場合、来年中にも山中が求める海外進出を示唆。長期政権を築く安定王者が、満額回答でアピールする。

 調印前に行われたグローブチェックで、スリヤン陣営の顔色が変わった。挑戦者の青に対し、山中のグローブは黒。契約の段階で合意しているにもかかわらず「同じ条件で戦うため、黒に変えさせてほしい」と要求した。日本ボクシングコミッション(JBC)の説明で納得も、今度は「念のため王者のグローブもチェックしたい」とアピール。双方のグローブを何度も写真で撮るなど、最後まで緊張感を漂わせた。

 一方の山中は10分近く中断したこの間、相手陣営には目もくれず再開を待った。12年4月のV1戦で、挑戦者の抗議によりグローブの色が変更になった経験もあり「こういう時は向こうに良い結果は出ない。自分が青で相手が黒にしてもいいから、早く終わって欲しかった」。王座奪還から3年、経験豊富な王者はどこまでも冷静だった。

 成長を実感して迎えるV7戦だ。今回の試合に向け、スパーリングの中で前に構える右手の使い方、フットワークなど、新たに取り組んだ練習に手応えを感じた。「ガード1つ、パンチ1つにしてもレベルは上がっている。自分の成長を感じる練習が出来た。KOで勝って、強さを証明するだけ」と言葉に力を込めた。

 過去43戦で1度もKO負けのないスリヤンを倒せば、かねて希望してきた海外進出にも前進する。バンタム級では世界でも抜けた存在になりつつあり、国内でのビッグマッチ実現は容易ではない。帝拳ジムの本田明彦会長は「本人の希望でもあるし、スリヤンを倒せば海外も考える」と明言。今月25日にIBF同級王座決定戦を行うカバジェロ(米国)ら、具体的な候補の名前も挙げた。

 「KOはかなり意識している」と語る山中。6戦連続のKO防衛を足がかりに、海外進出をアピールする。【奥山将志】

 ◆主なルール

 採点は10点法でフリーノックダウン制。4回までに偶然のバッティングで続行不能な場合引き分け。5回以降は採点。バッティングで負傷の場合、故意なら負傷のない選手から2点、偶然なら1点減点。4回、8回終了後に採点公開。日本製8オンスグローブ使用。レフェリーはローレンス・コール(米国)、ジャッジはマルコム・ブルナー(オーストラリア)、デビット・サザーランド(米国)、ジャック・ウッドバーン(カナダ)。