<プロボクシング:WBC世界バンタム級選手権12回戦>◇22日◇東京・代々木第2体育館
王者山中慎介(32=帝拳)が、同級1位の指名挑戦者スリヤン・ソールンビサイ(25=タイ)に3-0で判定勝ちし、7度目の防衛に成功した。3度のダウンを奪ったが、具志堅用高の6連続KO防衛の日本記録に並ぶことはできず、約2年半ぶりの判定決着となった。防衛回数は日本歴代5位タイとなり、通算戦績を22勝(16KO)2分けとした。
試合終了のゴングを聞くと、山中は小さく首を振り、深々とファンに頭を下げた。7、8、9回に1度ずつダウンを奪う完勝も、6連続KO防衛の日本記録に並ぶことはできなかった。「当たれば効いているのは分かったが、仕留められなかった。ゴッドレフトは不発でした」。苦笑いを浮かべ、唇をかみしめた。
1度は大記録をつかみかけた。7回2分30秒すぎ、コンビネーションからの得意の左ストレートで、相手の体がロープからはみ出るほどの豪快なダウンを奪取。だが、カウント途中で闘争本能が空回りした。コール・レフェリーが「7」を数えたあたりで、ニュートラルコーナーから数歩前に出た。レフェリーは山中を注意し、カウントをストップ。スリヤンは10秒以上も左膝をついた状態で回復に努めた。試合後、山中は「本能がそうさせてしまった。じっとしていれば10カウントだった」と反省した。
KOにこだわるのは「悔しい」経験が原点にあるからだ。10年6月、無敗で日本王座を獲得も、それほどの注目は浴びなかった。所属の帝拳ジムには世界王者の西岡以外に東洋、日本王者合わせて5人の王者がいた。11年11月、世界を取った時も同じ。当時、日本人世界王者は史上最多の8人いた。「もっと目立ちたかった。そのためにはKOを重ねていくしかない」。倒して勝つことが、未来を切り開く手段だと信じて戦ってきた。
王座戴冠から丸3年。32歳となった今なお、進化を求め続けている。試合後、本田明彦会長が「使い方がうまくなった」と評価した「右」は今回の強化ポイントだった。必殺の左につなぐジャブに加え、相手の動きを止めるような腕の使い方も実戦で生きた。山中も「右で良い感じにもっていけた。納得いかない人もいると思うが、まだまだ負ける気はしない」と自身の成長を確認し、前を向いた。
ランキング1位の指名挑戦者を退け、希望する統一戦への機運はさらに高まった。本田会長は「防衛回数を狙っているわけではない。次はどこへでも行く」と、海外進出にも前向きな姿勢を示した。「バンタム級最強を証明する」と話す山中。記録は途切れたが、その目は確かな目標を見据えている。【奥山将志】