ボクシングの前WBC世界ライトフライ級王者井上尚弥(21=大橋)が、過去最高の準備を整え2本目のベルトを狙う。今月30日のWBO世界スーパーフライ級王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦を控えた12日、横浜市内のジムで6回のスパーリングを行った。フィリピン人のパートナーを“KO”に追い込み、絶好調ぶりをアピールした。国内最速のプロ8戦目での2階級制覇へ、これから最後の追い込みに入る。

 完璧な“KO”だった。予定していた6回のスパーリングの最終回。井上はボディー、顔面と的確にパンチを打ち分けると、素早いステップワークですぐさまポジションをチェンジ。フィリピン人パートナーの上体が浮いたと見るや、ボディーへの強烈なアッパーで、キャンバスに沈めた。相手は足をばたつかせて立ち上がることが出来ず、続行不可能をアピールした。

 2階級で2ケタ防衛を果たすなど、世界戦だけで30戦の経験を持つ世界的名手との試合を見据え、この日までにキャリア最多の159回のスパーリングを消化してきた。父の真吾トレーナーは井上の動きを絶賛した上で「通常は120回程度だが、相手はスーパーチャンピオン。確認事項を1つずつつぶしてきたら、気がつけばこのラウンド数だった」と解説した。

 井上はスーパーフライ級に階級を上げたことでのプラス面を強調した。ライトフライ級時代は10キロに及ぶ減量のため、この時期は体重を意識しながら、練習量を抑えざるを得なかった。「このタイミングでも体を追い込めるのは大きい。良い調整が出来ている。スパーリングも相当やったので、引き出しも増えた」と手応えを口にした。

 年末恒例の今年を表す漢字には「挑」と記した。4月に国内最速のプロ6戦目で世界王座を奪取。年内2度目となる世界タイトル挑戦に「強い人間に挑むのは燃える。簡単ではないが、2階級制覇を達成したい」。激動の14年を勝利で締めくくるため、心と体を研ぎ澄ましゴングを待つ。【奥山将志】