川嶋返り咲き失敗、涙の引退/ボクシング※画像クリックで拡大表示<プロボクシング:WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦>◇14日◇横浜文化体育館◇観衆5000人

 元WBC世界スーパーフライ級王者の川嶋勝重(33=大橋)が、王座返り咲きに失敗し、現役引退を表明した。WBA同級王者アレクサンデル・ムニョス(28=ベネズエラ)に序盤から打撃戦を挑み、左右フックや左ボディーブローで追い込む場面もあったが、有効打で上回った王者に0-3の判定負け。試合後のリング上で引退を発表した。川嶋は32勝(21KO)7敗、2度目の防衛に成功したムニョスは32勝(27KO)2敗。

 涙が止まらなかった。判定負けのアナウンスを聞いた川嶋は「もう1度、世界王者にはなれなかったけど、皆さんに感謝しています。ここまで生きてきて良かった」とマイクで引退を宣言した。号泣していたが、心の中に悔いはなかった。

 対日本人6戦全勝でKO率8割強のムニョスに打撃戦を挑んだ。6、7回には左ボディーブローで足を止めた。11回に相打ちの右ストレートを浴びてぐらついたが、前進し続けた。3年半前に徳山を倒した右フックを狙い続けた。最後まで一撃必殺の自分のボクシングを貫いた。

 昨年1月、WBC王者ミハレスとの再戦で人生初のTKO負けを喫した。引退を撤回して臨んだ一戦で惨敗。本気で辞めるつもりだった。しかし、時がたつにつれて復帰への思いが強まった。技巧派のミハレスとは「殴り合い」ができなかった。最後は愚直に打ち合う自分のボクシングで終えたかった。目標を同じファイターのWBA王者ムニョスに切り替え、再び復帰を決した。

 この試合で「負けたら最後」と決めていた。1カ月前から夜になるとムニョスの顔が浮かんだ。今までにない恐怖感だったが、環(たまき)夫人にスパーリングのビデオを撮ってもらうなど、夫婦一体で最後の試合に懸けた。「勝ちはないと思った。不器用さ、センスのなさが出たかな」と試合後は話したが、1人のジャッジは1ポイント差。元世界王者の意地は見せた。

 21歳の時、リングに立つ友人に刺激を受けて大橋ジムに入門。構えから教わった。プロテスト受験まで1年半もの時間を要した。その不器用な男がコツコツと努力を続け世界の頂点に上り詰めた。「才能もセンスもない男が世界を取った。ボクシング界の宝です」と大橋会長。真っ向勝負の記憶に残るファイターがリングを去った。【田口潤】[2008年1月15日8時40分

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