異色の経歴を持つ若武者が相撲界に現れた。大相撲春場所(8日初日、大阪・ボディメーカーコロシアム)の新弟子検査が2月28日、大阪警察病院で行われ、ボディービルディング出身の山端(やまばな)克忠(22=高砂)が体格基準の167センチ、67キロをクリアした。幕下10枚目格付け出し資格を有する大道あらため御嶽海(みたけうみ)ら、43人の受検者全員が基準を満たし、内臓検査を経て合格が発表される。

 筋骨隆々の逆三角形ボディーに、真っ黒に焼けた肌。丸刈り頭の山端はひときわ目立っていた。182センチ、129キロ。握力検査では「軽く握りました」と言いながら右53キロ、左61キロを記録。元学生横綱の御嶽海や大輝、居反りを得意とする宇良、カナダ人30年ぶりの力士誕生を目指すブロディク・ヘンダーソンらを差し置いて、周囲の視線を独占した。身長と体重を測定した親方衆からも「彼がボディービル出身?」「すごい体でしょ」とため息が漏れた。

 大産大を1年で中退後、「強くなりたくて」と、ウエートトレーニングを始めた。大阪のKING GYMに所属し、昨年9月のJPC(日本フィジーク委員会)ノービス級では5位入賞。床に置いたバーベルを腰付近まで持ち上げるデッドリフトは300キロ超の記録を持つ。日本でも数人という怪力が最大の持ち味だ。後援会関係者の紹介で体験入門後に挑戦を決め、「早く強くなって有名になりたい」と鼻息を荒くした。

 部屋の大先輩である元横綱朝青龍に憧れ、「なんか好きなんです。力強い。かっこいい力士になりたいです」と目を輝かせる。「相撲に関する知識は全くありません。でもやっていけます。大丈夫です!」。生きの良さは、奔放ながら無敵の強さを誇った朝青龍と重なる。「未経験なので、どこまで行けるか。ボディービルで培った力を生かして頑張りたい」。未知数の可能性を秘めた若武者が、相撲界に殴り込む。【桑原亮】

 ◆山端克忠(やまばな・かつただ)1992年(平4)9月29日、兵庫・加西市生まれ。小学校時代に剣道を始め、高校まで一筋。大産大を1年で中退後、ウエートトレーニングを始める。デッドリフトで300キロ超の記録を持つも「なんで(持ち上がるん)でしょうね」と笑い飛ばす。ちなみに日本記録は332・5キロ、世界記録は524キロ。182センチ、129キロ。血液型O。