関脇照ノ富士(23=伊勢ケ浜)が横綱白鵬(30)に敗れて3敗目を喫し、今場所後の大関昇進はなくなった。「白鵬に勝って13勝以上」とされた目安を満たせず、昇進は来場所以降に持ち越しとなった。

 支度部屋に戻ってきた照ノ富士は「ハチサン(8勝3敗)? 無理やな」とこぼした。初場所は前頭2枚目で8勝だったため、今場所後の大関昇進の目安は直近3場所33勝に加え「白鵬に勝って13勝」。その白鵬に3敗目を喫し、審判長を務めた井筒審判部副部長(元関脇逆鉾)からは「(12勝は)数字的にも弱い。ちょっと(場所後の)大関はない気がしますね」と指摘された。挑戦は、来場所以降へ持ち越しとなった。

 神様が心を乱したのかもしれない。取組前の花道。観客から右肩をたたかれ露骨に嫌がった。「肩を触られるの、嫌いなんだよ。俺の神様は肩にいるから」。集中力こそ保ったが、立ち合いに一瞬遅れ、先場所のお返しとばかりに右を張られた。もろ差しを許し、左上手を取ってもすぐに切られる。逆に、右腕を巻き替える間に左上手を取られて豪快に投げられた。

 春場所では唯一、白鵬に土をつけた。その再現はならなかったが、収穫はある。「前は一気に押されたけど、残せるようになったな。差すことできたんだな。腰も振ることができた。もうちょっと頑張れば、だと思う」。過去5度の白鵬戦を振り返り、成長を実感するとともに課題も見つかった。

 来場所後の大関昇進でも、1958年(昭33)以降では大鵬らと並ぶ新三役昇進後3場所のスピード記録となる。そのためにも今場所は2桁勝利が必要だ。井筒審判部副部長は「来場所13勝くらいすれば別かもしれないが、今場所は2桁は勝ってほしい。ここで9勝では痛い」と説明した。

 これまで狙った獲物は必ず仕留めてきた。「あと4番ある。2番勝てばいい。とりあえず、明日の一番ですね」と照ノ富士。積み重ねた努力と星数を、無駄にする気はない。【桑原亮】