関脇照ノ富士(23=伊勢ケ浜)が、2場所連続の2ケタ勝利を挙げ、来場所の大関とりへ1歩前進した。3敗で並んでいた西前頭8枚目の高安(25)を送り出し、初優勝への望みもつないだ。

 悠々と大台に乗せた。照ノ富士は立ち合いで右を固めてぶつかり、右手で高安の右腕をたぐる。後ろ向きにさせると左手でまわしをつかみ、力強く送り出した。「当たっていこうと思ってたけど、流れで腕にいっちゃった。それで良かったと思います」。初の2桁となる13勝を挙げた春場所に続く2桁到達で、来場所の大関とりへの最低基準をクリア。「どうしてでしょうね~」といたずらっぽく笑った。

 その秘密は兄弟子の言葉にある。春場所の快進撃の後、横綱日馬富士から「こういう時、しっかり稽古しないといけないよ」と助言された。「こういう時」とは春巡業のこと。「上に上がりたい」と精力的に稽古した。11日目で白鵬に敗れて今場所の昇進はなくなったが、気の緩みはない。過去3勝3敗で苦手意識のある高安も寄せ付けず、進化の証しを見せつけた。

 この1勝には大きな意味がある。来場所の大関とりへ、審判部からは今場所の2桁勝利を求められた。昇進目安は直近3場所で33勝。最近では稀勢の里や豪栄道が32勝で昇進したが、過去には34勝で見送られた例もあり、印象が重要な要素となる。審判長を務めた藤島審判部副部長(元大関武双山)は「大きいですよ。2桁勝たないことには、来場所は始まりませんから」と見解を示した。

 白鵬とは1差で、逆転優勝の可能性も残した。場所前の目標の2桁勝利は達成。次の目標を「1日1日集中して頑張りたい」と定めた。残り2日で、大関がグッと近づく。【桑原亮】