現役2番目の年長力士で、05年夏場所で34歳5カ月の史上最年長関取となった元十両の出羽の郷(44=出羽海)が夏場所千秋楽の24日、現役引退を表明した。

 最後の相撲は三段目で、23歳年下の八菅山(21=芝田山)と。左四つになったが、寄り切られた。それでも「自分の相撲が取れたことが良かった。今日の相撲に悔いはないです」と最後の一番を振り返った。

 86年夏場所で初土俵を踏んだ。同期は元小結巴富士(九重)ら。今場所は、30度目の夏場所だった。1番の思い出を問われると「大阪で(新十両昇進を)決めたときですね」。

 初土俵から20年目、西幕下4枚目だった05年春場所で、4勝3敗で新十両昇進を決めた。34歳5カ月は戦後1位の高年齢。所要114場所は、琴冠佑、琴国の89場所を大きく上回るスロー昇進で、当時大きく話題となった。1場所で陥落したが、記録に名前が残った。「いいのか、悪いのか…」と苦笑いも交じった。06年3月には、大阪の宿舎に不法侵入した不審者を捕まえるお手柄を挙げたこともあった。

 出羽海部屋は出羽疾風(26)ら久しぶりに関取が誕生するなど、若手で活気づいてきた。それも、引退を決めた1つの理由だった。「若い者が育っている。退いて、外から部屋を応援したいと思った」。今後は福岡で、福祉関係の仕事に就く。

 力士人生30年を振り返り「いい人生でしたね。ほかの世界じゃできない経験もありましたから」。部屋の若い衆に囲まれながら、最後を見送られた。