日本相撲協会は29日、名古屋場所(7月12日初日、愛知県体育館)の新番付を発表した。夏場所で初優勝し、年6場所制となった1958年以降最速の2場所で三役を通過し、平成生まれで初の大関となった照ノ富士(23=伊勢ケ浜)が優勝を宣言した。入門前からお世話になった音羽山親方(享年43=本名・浪岡貞博)への恩返しの意味も込めて、新大関としては06年夏場所の白鵬以来史上9人目の優勝に挑む。

 照ノ富士が初めて、優勝を目標に掲げた。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)から「優勝を目指してほしい」と期待されると「もちろん、もう大関なんで、目指して頑張りたい」と、過去の会見では決して言わなかったV宣言。「大関の地位は横綱と優勝争いしていかなきゃいけない」と、自覚も芽生えていた。

 番付を駆け上がった勢いを、止めるつもりはない。三役同様に大関も2場所通過なら、部屋の大先輩の照国らと並ぶ歴代3位のスピード記録。新入幕後なら年6場所となった58年以降、最速の10場所で昇進となり、九州場所で綱を張ることになる。「できれば早く上がりたい。でも上がりたいと思ってそのまま上がるものじゃない」。いばらの道に挑む覚悟はできている。

 恩返しの思いもある。入門前から指導を受けていた音羽山親方が20日に急逝した。「いっぱいかわいがってもらっていたので、亡くなった日に(線香をあげに)行きたいなと思っていたんですけど、時間がなかった。寂しいです」と、目頭を熱くした。生前、親方は兄弟子の横綱日馬富士に「こいつをどうにか大関にしてほしい。大関になってほしい」と話していたという。昇進後の日程が多忙で通夜、葬式に参列できなかったが、故人の言葉は、しっかりと受け止めている。

 音羽山親方も優勝決定戦で敗れて達成できなかった新大関Vへ「1番1番集中してやってれば、後からついてくる」。9人目の快挙へ、突き進む。【桑原亮】