33歳の嘉風(尾車)が、この日も元気いっぱいの一番で館内を沸かせ、9勝目を挙げた。

 3敗で優勝争いに踏みとどまりたい豊ノ島(32=時津風)との一番。左をこじ入れ、右上手の体勢で突進。後退しながら何とか回り込もうとする豊ノ島を、前傾姿勢から足を取り、そのまま土俵外へ出した。

 「大昔に(横審)総見で1回だけやった」という、足取り。必死な土俵姿勢が珍手になって表れた。これで自身初の3場所連続2桁勝利に王手。2横綱、2大関撃破の快進撃に、さぞ毎日の土俵も楽しいのでは、と思いきや「楽しいわけないでしょう。楽しくないのを楽しむんです」と、何やら哲学者のような答え。足取りの場面も「釣りでいえば、水面まで大物が来て『ここで逃すわけにはいかない!』という感じ」と、絶妙なたとえで表現。相撲同様、冗舌ぶりも軽やかだった。