左膝負傷のため、9月の大相撲秋場所を3日目から休場した横綱白鵬(30=宮城野)が6日、東京・墨田区の宮城野部屋で稽古を再開した。下半身のバランス感覚を確かめるなど、約1時間のごく軽めの再スタートとなった。秋巡業への合流時期など、復帰については明言しなかった。

 白まわし姿の白鵬は、どこか懐かしそうに3週間ぶりの土俵を踏みしめた。全身のバランスを確かめるように左右に体を振り、三段目の山口に体をぶつけた。四股を踏むようなそぶりも見せたが「足を上げただけ。踏んだって言わないよ」。そう言いつつ「気持ちいいですね。体がほしがっていた」と、顔には充実感がにじんだ。

 宮城野部屋は、耐震構造の問題で同じ墨田区内の別の建物に移転したが、この日は移転前の部屋で始動した。「今日が初めて」と言ったように休場後初の土俵での稽古で、耐震性に不安のある建物を揺らすようなハードな稽古はおあずけ。「まだまだなので出来るだけ抑えて体を作っていきたい」とはやる気持ちをなだめながら言った。

 8~25日の秋巡業は前半を休場する。復帰時期について「初場所を目指してもいいかな」と冗談を交え「13日に診断を受けて、20日の丸亀から(の合流)が早くなるか遅くなるか」と慎重な姿勢は崩さなかった。

 休場がリフレッシュの好機とする見方もある。だが白鵬は「けがと病気は稽古で治せというくらい。稽古をしないで治ることはない」と分析。「でも張りつめたものが緩んで、よく眠れたことが全ての解決」とプラスに転じさせた。

 秋場所は、生放送で自分がいない土俵を連日見たという。「やっていると1日でも早く勝ち越しや優勝を決めたいけど、見てる方からするとこんなに面白い場所はない」といたずらっぽく笑った。「不思議なものだね。(横綱になって)初めてだからね」。不在による違和感を誰よりも感じていた。本来の居場所へ戻るため、まずは第1歩をしるした。【高橋悟史】