横綱日馬富士(31=伊勢ケ浜)が、会心の相撲で1敗を守った。大関豪栄道を一気に押し出して11勝目を挙げ、全勝の横綱白鵬をピタリとマーク。2場所休場し、ケガだらけだった体の回復が奏功した。最高に近い状態で、今日13日目に白鵬との直接対決を迎える。

 右目を気にしながら、日馬富士は「一番一番、命を懸けて取ってます」と言った。豪栄道に頭から突っ込み、昨年秋場所で「右眼窩(がんか)底骨折」を負った患部を再び強打。だが、ひるむどころか前に出て、豪快に押し出した。「悲鳴を上げてるよ。『やめて~』って」。そう笑いながら、今場所一番の内容に「立ち合いだけ集中して、あとは自分の体に任せて。出足が良かった。体がよく反応してくれてます」。流れるような動きは、体が息を吹き返した証拠だった。

 数々のけがに泣かされてきた。名古屋場所2日目からは2場所休場。その期間を、プラスに捉えた。

 「2場所休んでね、体が元気で、いろんなけがが治りつつある。体中けがだらけで、ボロボロだった。足首も膝も、肘も、だいぶ休めた。それが良かったんじゃないですか」

 名古屋場所後にモンゴルに帰国した際は、首都ウランバートルから約450キロ離れたアルハンガイ県で温泉治療に努めた。秋巡業で復帰すると、感覚を確かめるように稽古を重ねてきた。「(肘も)よく耐えてくれてます」。努力が、実を結んでいる。

 今日13日目は、いよいよ白鵬との直接対決。最近2場所は1勝1敗も、弟弟子の照ノ富士への援護射撃の意味合いも強かった。だが今回は違う。「楽しみです。ずっと大きな壁。そういう存在なので。努力の積み重ね。精いっぱいやります」。2年ぶりの賜杯へ、壁を乗り越える準備は、できている。【桑原亮】