上層階から見る眼下の景色は、さぞかし奇麗に見えるかもしれない。だが、その足は簡単にすくわれやすく、一気に急降下するリスクもはらむ。番付のアップダウンは力士に付きもの。今年1年、最も番付を上下動させた「エレベーター力士賞」は、勢(29=伊勢ノ海)が受賞した。その変動値「38枚」は、2位に8枚差をつけ断トツだった。

秋場所9日目 安美錦(右)を小手投げで破り勝ち越しを決めた勢
秋場所9日目 安美錦(右)を小手投げで破り勝ち越しを決めた勢

 春場所の8勝7敗を除けば、好不調の差は明らかだった。1勝と2勝に終わった2場所(初、名古屋)は前頭2枚目と3枚目。2度目の急降下となった秋場所は2度目の2桁勝利。そうなれば、アルファベットの「W」のような上下動を描き、平幕上位に戻った九州場所は再度、ガツンと厚い壁にはね返されて-。そんなエレベーターの法則? を覆し、前頭4枚目以上では自身初の勝ち越しどころか、見事に自己最多の12勝をマーク。来年初場所(1月10日初日、両国国技館)の三役復帰が濃厚だ。

 上下動の激しさは一見するとムラっけの激しさを想起させる。だが勢は違う。「結果は結果。相手は上だろうが下だろうが、みんな強い」と目線は変えない。取組後の支度部屋での表情が、勝敗に左右されず安定している。勝ってはしゃがず、敗れて落ち込まずの姿勢だ。右からの攻めにも活路を見いだし、来年の目標は「最高位(小結)の更新と上位定着」。そうなると来年は、番付の上下差が小さい「小波大賞」の最有力候補だろう。【渡辺佳彦】


◆15年大相撲「番付変動値」5傑◆


力士名変動
138枚西2(▼11)東13(△3)東10(△7)東3(▼9)東12(△8)東4
2隠岐の海30枚東6(△7)関脇(▼11)西10(△5)東5(△5)小結(▼2)西2
3佐田の富士24枚東15(△1)東14(△7)西7(▼2)東9(△7)西2(▼7)西9
高安小結(▼3)東3(▼5)西8(△6)東2(▼1)西3(▼9)西12
5大砂嵐22枚東13(△2)東11(△8)西3(▼5)西8(△6)東2(△1)西1
玉鷲東9(△9)小結(▼5)西5(▼2)東7(△2)東5(▼4)東9