「稽古もそう、何でも『耐』えるしかないんですよ…」。そう切り出した誉富士(30=伊勢ケ浜)の悩みは尽きない。今年の漢字に「耐」を選び「今年は30(才)という年にもなりましたし、守りに入るんじゃなくて、耐えて稽古する。それ(年)を理由にして休むということはない。無理はしないほうがいいと思いますけど…」と話した。

誉富士が選んだのは「耐」
誉富士が選んだのは「耐」

 今年、関取衆の活躍が目立った伊勢ケ浜部屋。照ノ富士が夏場所で初優勝し、大関昇進を決めた。宝富士は名古屋場所で新小結になった。安美錦は秋場所から最年長関取として奮闘。横綱日馬富士は九州場所で2年ぶりの優勝を果たした。そんな中、誉富士は秋場所まで、番付が5人のうちでいつも一番下だった。

 そんなとき、新たな挑戦が〝実〟を結んだ。秋巡業の途中、たまたま「子供の稽古」のメンバーに呼ばれた。「子供は好きだし、せっかくなら楽しいほうがいい。普段は全然おとなしいんですけどね」。休日は自室から1歩も出ない時もある控えめな面もあるが、思い切って発奮した。これが大当たりし、レギュラーメンバーに抜てき。日の目を見る機会も増えて人気上昇中だ。

 本業でも、腐らず稽古してきた成果が出て、九州場所では自己最高位を西前頭6枚目に更新した。近大の後輩でもある宝富士(28)を抜いた。部屋の関取衆では唯一、三役を経験しておらず「もちろん、狙いたい気持ちはあります。来年は『喜』にしたいですねえ」。実りの秋、厳しい冬を越えて、来年は大輪を咲かせるつもりでいる。【桑原亮】