大関琴奨菊が、14勝1敗で初優勝を果たし、豊ノ島の夢は、かなわなかった。

 決死の覚悟で栃煌山に挑むも、十分に踏み込めない。押し込まれると踏ん張りが利かなかった。14日目に痛めた左膝は予想以上の重傷。治療に専念したが、3敗目を喫して逆転優勝の望みがついえた。

 小学時代からの友人、琴奨菊の優勝が決まった瞬間は支度部屋で何度もうなずいた。「一番優勝してくれてうれしい人だし、一番優勝されて悔しい人。せっかく優勝争いしたし『おめでとう』はできるだけ早く言いたかった」。複雑な心境は残るが、土俵を下りれば親友同士。いの一番に祝福した。「この先ないだろうなというぐらい、熱い場所だった」。賜杯は抱けなかったが、目標だった10度目の三賞となる殊勲賞を獲得。最後は笑みがこぼれた。