大相撲の春巡業は18日、東京・九段北の靖国神社で奉納相撲が行われた。

 この春巡業では、14日夜の前震発生以降、16日の高崎巡業、17日の埼玉・川口巡業で、熊本地震に向けた募金活動を行っていた(15日は移動日のため開催なし)。ただ両巡業とも、勧進元(主催者側)が日本相撲協会巡業部の了解を得て行ったもので、高崎では地元の女性関係者が募金箱を持って呼びかけ、川口では入退場口に募金箱が置かれただけで、同協会関係者はタッチしなかった。

 この日は初めて、同協会が主導する形で行われ、力士が募金箱を手に観戦客の入退場口付近に立ち、募金を呼びかけた。参加したのは幕内では大分県出身の関脇嘉風(34=尾車)、十両では熊本県玉名市出身の天鎧鵬(31=尾上)、長崎県出身の佐田の富士(31=境川)鹿児島県出身の千代丸(25=九重)ら九州出身力士。また出身地に関係なく朝弁慶(27=高砂)、阿武咲(19=阿武松)、天風(24=尾車)らの関取衆もすすんで募金箱を持って呼びかけた。

 熊本地震の震源からは離れている大分県佐伯市出身の嘉風だが、身内らと連絡を取り「大きな被害はないけど、次にいつ地震が来るかという不安感で、生きた心地がしないようです。びくびくして生活している」と憂慮した。自分に出来ることとして「一番は炊き出しとかしたいんですが…。微力ですが相撲で(不安感が)紛れるのなら、力士が自覚して一生懸命、相撲を取ることが大事だと思う」と話した。

 募金箱を手に天鎧鵬は「何か物を送りたくても流通がダメで、現地に行くことも出来ない。こんなことしか出来ないんです」と話し、元気な両親も、よくよく話を聞くと、父親は座ったまま寝ているといい、母親はストレスでじんましんができたという。「水が足りないようで寝泊まりも車の中。でも自分は相撲を取ることしかできない」と視線を落とした。

 香川県出身の天風は、入退場口付近の集団とは1人だけ離れ、靖国神社の敷地内をできる限り募金箱を持って動いた。メディアの目に触れない場所ばかりだったが、自分のしこ名と募金を大きな声で呼びかけた。「四国が九州に近いとか遠いとか、そんなことは関係ないんです。役に立ちたいなと、それだけです。自分自身の身に置き換えたら、出身地なんて関係有りません」と、最後は土俵を囲む観客席も所狭しと足を棒にして回り、汗だくになりながら募金を呼びかけていた。