横綱白鵬(31=宮城野)が、新小結魁聖(29=友綱)を寄り切りで下して無傷の5連勝とした。だが土俵から出した後にもう一押しを加え、物議を醸した。新体制の審判部が土俵の正常化を進めているが、どこ吹く風。今場所、駄目押しと取られかねない行為は3度目となった。

 白鵬が、またしても際どい行為で国技館をざわつかせた。巨漢の魁聖を右四つ、上手出し投げから盤石の寄り切り。すると直後に俵の外まで左足を踏み込み、さらに一押しして東の花道付近まで吹っ飛ばした。くしくも場所総見のため来場していた横綱審議委員会からは、非難の声が上がった。守屋秀繁委員長は「今日は駄目押しでしたね」と断言。その上で「土俵際で見ているお客さんにケガをさせる。そういうことを考えて相撲を取ってもらいたい。興行という面があるので」と苦言を呈した。

 白鵬は春場所で2度も駄目押しして、8日目には当時の井筒審判長(元関脇逆鉾)に重傷を負わせて謝罪したばかり。審判部からも厳重注意を受けたにもかかわらず、序盤5日間で早くも駄目押しと取られかねない行為は3度目だ。八角理事長(元横綱北勝海)は見解を質問しようとする報道陣を遮り「ひどかったら言うよ」と一向に収まらない状況にへきえきした様子。一方で、土俵下にいた友綱審判長(元関脇魁輝)は「別段、大騒ぎすることじゃない」と、この日は駄目押しを否定する見解を示した。

 周囲の困惑をよそに、白鵬は「この頃は押しても離れても、相撲が取れてます」と涼しい顔で振り返った。他に全勝は春場所で優勝争いした2大関のみとなり「大阪の3人が、そのまま来たという感じがします」。幕内最多勝利、最多優勝記録の更新よりも、注目が集まるのは軍配の後。最後の最後まで、白鵬から目が離せない。【桑原亮】

<駄目押し騒動の経緯>

 ◆先月26日の力士会 審判部の二所ノ関部長(元大関若嶋津)と友綱副部長(元関脇魁輝)が、最近目立つ「待った」「呼吸を合わせない」「全く手を付かない」など立ち合いの乱れについて異例の注意喚起。駄目押しも含めた土俵上の振る舞いについても注意を促した。

 ◆2日目の白鵬-宝富士戦 春場所で不覚を喫した宝富士を寄り切りで下した白鵬は、勢い余って土俵下まで吹き飛ばす。だが手を差し伸べて事なきを得た。友綱副部長は「『やっちゃったかな』という反省の気持ちがあったのかもね」。

 ◆4日目の白鵬-正代戦 「正代コール」の中、白鵬が右から強烈な張り手から一方的に押し出し。最後にとどめのひと突きを見舞い、二所ノ関審判部長は「なかなか直らないね。見苦しい」。