東前頭4枚目松鳳山(32=二所ノ関)が、大関稀勢の里(30=田子ノ浦)に今場所2度目の土を付けた。

 立ち合いで右に動くと、同じ二所ノ関一門の綱とり大関は土俵にバッタリ。「思い返すと、(過去に)9番負けたのは、全部中に入られているんですよ。最初は中に入ろうと思ったけど、左を差されたら絶対に勝てない。距離がいるなと思って行ったら、奇麗に決まった」と振り返った。

 会場はざわついたが、それぞれの事情もあった。

 「正直、自分には(綱とりは)関係ないじゃないですか。自分も切羽詰まってるんで。負けてもともとなら、何でもやってやろうと思って。手とか引っ張りまわして、足も蹴たぐってやろうと思って。宇良みたいに」

 7敗と負け越し王手の崖っぷち。取組前の支度部屋では、奇手・居反りが得意な小兵の十両力士の映像が流れていた。だが、立ち合いで動く覚悟を決めたのは「最後に構えた時です。大関も、低かったですよね」。冷静に相手を見て、勝機を見いだした。

 支度部屋に戻った最初の一言は「ザ・空気読めない」。だが、それが勝負の世界だ。「踏みとどまりましたよ。ここから。また上位で相撲が取れるように、自分も負けられない」と気合を入れた。