6戦全勝同士で争われた幕下の優勝を決める一番は、西44枚目の竜勢(30=鏡山、本名・黒谷昇太)が、元前頭で再十両を狙った西8枚目の山口(27=宮城野)を、右を巻きかえてのもろ差しから寄り切って、初の各段優勝を決めた。

 少年時代から野球やラグビーで汗をかき、東京・修徳高に入学。だが部活も中途半端でサボるなど、父から「無駄だから辞めろ」と言われ退学した。そこで「逆にスイッチが入って、やってやろうと思った」と、その父が師匠(元関脇多賀竜)を務める鏡山部屋に入門した。

 今場所は立ち合いから集中力が高まっていることを自覚。「手を付いた時に“行ける”と思えるほど。自分でも気持ち悪いと思うぐらい、調子が良すぎた」という。ここ数年で、角界でもはやりの器具を使ったトレーニングや、プロテインの摂取で体重も「10数キロは増えた」という。

 30歳は超えたが、体も大きくなり、精神的な自信も芽生えた。今年春場所の東幕下35枚目が自己最高位だが、全勝したことで来場所は大幅な更新が見込まれ、関取の座が見える幕下上位での相撲になる。「立ち合いと脇が空いてしまうこと。頭をつけて」と課題を見いだし「右四つ。出し投げも」と理想とする父や横綱白鵬に少しでも近づくべく、精進を続ける。