大相撲の夏巡業は19日、北海道函館市で行われ、横綱白鵬(31=宮城野)が親交のあるレスリングの吉田沙保里(33)をいたわった。

 リオデジャネイロ五輪のレスリング女子53キロ級決勝で敗れた吉田の試合を、初戦からテレビでずっと見ていた白鵬。無敵の女王が号泣した姿に「どういう気持ちで戦っていたんだろうなぁ。すんなり勝っていたように見えるけど、何か硬さがあるなと思っていた。勝って当たり前という世界はチャンピオンしか、横綱になった者にしか分からないからね」。相当な重圧を背負っていたであろう、その心中を思いやった。

 印象的な言葉があった。インタビューで吉田はまず、金メダルを取れなかったことを謝っていた。その言葉で白鵬が思い出したのは、自身の今年3月の春場所だった。

 千秋楽の日馬富士戦でとっさに変化してしまい、まさかの注文相撲による白星。観客からはヤジが飛び交った。優勝インタビューで泣いて謝った。「14日目までいい相撲を取っていたのに、千秋楽でああいう形で決まるとは思わなくて、思わぬ方向に走ってしまい(ファンを裏切った形に)自分に悔しくて、泣いた。吉田さんも4年間頑張ってきて、応援してくれたその人たちの気持ちを裏切ったというのが、考えなんじゃないかな」と推し量った。

 吉田が4年後の東京五輪で活躍する姿は「見たいし、応援に行きたい。でも、今はもう本当に、日本に帰っておいしいものを食べて、飲んで、ゆっくり温泉に入って、友人や家族に甘えてほしい。それからじゃないのかな、本当に」。終始しんみりとした表情で、吉田の労をねぎらった。