東前頭14枚目の遠藤(25=追手風)が、幕内では自己最速で勝ち越しを決めた。

 東12枚目蒼国来(32=荒汐)に押し込まれた土俵際で左下手を取ると、体勢を入れ替える。そのまま攻め立て、最後は粘る相手に体を預けて寄り切った。「必死でした。下半身がしっかりしていた」。力強さを取り戻し、復活を印象づけた。

 昨年春場所で左膝に大けがを負い、同年九州場所前には右足首も負傷。その後は苦しみ、もがいてきた。慎重な調整が続き、状態の悪かった今年名古屋場所は自己ワーストの3勝12敗。それでも懸命な治療で、復調の兆しが見えた。「ようやく稽古できるようになって、基本動作も出来なかったことが、出来るようになった。ケガがだいぶ良くなってきたというのはある」。今場所は左脚1本で体を支えて勝利をもぎ取るなど、ケガを感じさせない取り口で白星を並べている。「感覚は良くない」と万全ではないが「しっかりケアして、コンディションを整えて、しっかり集中できているからだと思う」と自己分析した。

 土俵入りから一際大きな歓声を受ける人気力士は、勝ち越し力士恒例のインタビューで「上がる前の歓声は力になるし、勝った後の歓声もやりがいがある。そのために頑張っているのかなと、自分では思います」と声を弾ませた。1敗を守り平幕優勝への期待も高まるが、これには「15日間やるまでピンと来ない。毎日しっかり、やれることだけをやって、集中してやるだけ」。白鵬不在の秋。無心で白星を重ねれば、12年夏場所の旭天鵬以来となる快挙もあり得る。