かど番の大関豪栄道(30=境川)が初優勝を飾った。前頭6枚目玉鷲(31=片男波)を寄り切り、無傷の14連勝で決めた。かど番優勝は08年夏の琴欧洲以来8人目。大阪出身力士では1930年(昭5)夏場所の山錦以来、86年ぶりの快挙となった。

 大関13場所目でようやく手にした賜杯。豪栄道は「精いっぱい自分の相撲をとることだけ考えました」と優勝を決めた一番を振り返った。「思い通りにいかないことが多くて…つらい日々もあったんですが今日で少し報われました」と話すと、口を真一文字に結んで必死に堪えていた涙が、幾筋もほおをつたった。インタビュアーに「その涙は」と問われると「うれし涙です」と答えた。

 大本命の横綱白鵬(31=宮城野)がけがで休場した今場所。先場所までとは、別人のような快進撃を見せた。初日から8連勝で単独トップに立つと、11日目は稀勢の里戦。同じ30歳の大関でも、相手は綱とり場所を続けて話題をさらっていた存在。場所前は「僕も目立ちたいですね」と対抗心を見せていた。追い込まれた土俵際から立て直し、もろ差しから逆転の渡し込みで11連勝。常に先を走られていた同世代の雄に一矢を報い勢いを加速させ、続く鶴竜、日馬富士の両横綱も撃破した。この日は立ち合いが合わず一度つっかけた。2度目の立ち合いで鋭く右を差し、一気に寄り切った。「自分の相撲を心がけて一番一番集中したことが結果に結びついたと思います」と振り返った。

 14年秋の大関昇進後は、左膝半月板損傷などのケガに悩まされ、負け越し4度、2桁勝利は1度だけ。先場所まで大関12場所の成績は93勝86敗で、勝率5割2分と低迷した。過去、大関初優勝を飾った力士で直前場所までの勝率ワーストは、89年九州の小錦で5割5分。大関史上最大の「V字回復初優勝」を果たした。

 千秋楽で大関琴奨菊(32=佐渡ケ嶽)に勝てば、かど番大関では初の全勝Vとなる。「精いっぱい頑張ります」。全勝で花を添え、来場所は綱とりに挑む。