東前頭14枚目遠藤(25=追手風)が、有終の美を飾った。錦木を力強い寄りで退け、自己最多を更新する13勝目を挙げた。取組前の三賞選考委員会ではすべての賞に名前が挙がり、自身初の技能賞を獲得。昨年春場所で左膝に大けがを負って以降、苦しみ抜いてきた相撲人気回復の立役者が、帰ってきた。

 勝ち残りの西の土俵下で、珍しく遠藤の頬が緩んだ。「(日大の)田中(英寿)理事長が来ているのに気づいた。まずいな、絶対勝たなきゃいけない、と」。母校の師の前で見せた相撲は、力強かった。立ち合いで左を深く差すと、じっくりこらえる。上手を引いた瞬間、盤石の寄りで13個目の白星を手にして「良かったです」と安堵(あんど)した。

 今場所は左膝、右足首の不安を感じさせず、美しい相撲が復活。取組前の三賞選考委員会では、自身初となる技能賞の獲得も決まった。「3つの中で一番取りたかった。自分の技能が評価されてうれしい」。左を差し、右前まわしを取って前に出る相撲は、この日も健在だった。優勝争いも演じ、豪栄道の初優勝を最後まで遅らせた陰の立役者。「それが僕で良かった。これで納得してなかったらヤバイでしょう」と笑った。

 25歳最後の場所で最高の結果を残し、八角理事長(元横綱北勝海)も「番付が下とはいっても、13番はなかなか勝てない。来場所が楽しみ」と期待した。10月で26歳。目指す新三役、その先へ「なれればいいですね」。もう、前しか見ない。【桑原亮】