西十両3枚目の佐藤(20=貴乃花)が東十両6枚目の大砂嵐(24=大嶽)との壮絶な張り合いを制して9勝目を挙げて、優勝争いとともに来年初場所(1月8日初日、東京・両国国技館)の新入幕へ、大きく前進した。

 「張られるのは予想していた。張られても熱くならないようにいこうと思っていた」という取組前。だが、右、左と掌底のような張り手が飛んできたときに、頭がクラッときた。「今まで軽い脳振とうはあったけど、このまま落ちちゃうんじゃないかと思ったのはなかった」。その瞬間、ひるむのではなく、かえって闘争心に火がついた。

 「途中から、どうでもよくなった。気持ちで負けて相撲でも負けたら、ばからしい。あっちがけんか腰で来ているなら、こっちもけんか腰でいかないと。正攻法でいっている場合じゃない」

 逆襲、そして張り返しが始まる。取組途中には互いが離れて見合う場面もあった。まるで、けんかのようなにらみ合い。負けん気をぶつけ合う。そして、ひるんだ相手に右を差して、中に入って一気に走った。土俵外へ飛ぶように寄り倒した。

 口の中は切れていた。だが「大丈夫」と言い、トップの青狼(28=錣山)を1差で追う十両の優勝争いについて「とにかく相手を倒さないことには優勝もない。守りにいく必要はない」と話した。

 稽古場で、師匠の貴乃花親方(元横綱)には「張られたら倍、張り返せ」と言われてきた。実践した20歳のホープは「ほめられることはないと思いますが、怒られはしないと思います。明日につながる一番だった」と、気を静めていた。