稀勢の里が初めての“タイトル”を手にした。右の上手はまわし1枚で伸びきっていたが、敗れた前日と違って得意の左四つ。粘る照ノ富士を寄り切り、今年68勝目を挙げた。2位の日馬富士が67勝なため、自身初の年間最多勝が確定した。日本出身力士の最多勝は98年の3代目若乃花以来で、その年に1度も優勝がなく獲得した力士は年6場所制が定着した58年以降初めて。「ふっ」と皮肉めいたように笑い「いただけるものは、いただいていいんじゃない?」と話した。

 八角理事長(元横綱北勝海)は年間最多勝について「地力がある証拠だ。1つくらい優勝してもおかしくないと、本人が一番思っているだろう」とたたえた。実際、13勝が2度。3度の綱とりも経験した。1年間、高いレベルで安定した成績を残した。ただ、賜杯には届きそうで届かない。この日も最多勝が決まった直後に優勝が決まった。「毎日やるだけ。まだまだこれからです」と悔しさを押し殺して前を見つめた。

 栃ノ心戦の敗戦から一夜明けた朝。より一層、基本に取り組む思いを明かした。「明日、まだ残っていますから」。胸を張っていい「冠」を携えて、年納めの一番に臨む。【今村健人】