大関稀勢の里(30=田子ノ浦)が序盤を無傷で乗り切った。2横綱を倒して勢いに乗る平幕御嶽海に粘られながらも、最後は寄り切り。昨年夏場所以来の初日から5連勝を飾った。横綱白鵬も松鳳山を突き落として全勝を守った。ほかに無敗は平幕貴ノ岩、蒼国来、佐田の海の3人。鶴竜が敗れたため、横綱、大関陣で1敗力士はいなくなった。

 のど輪で押し切れない。はず(脇)に手をあてがわれて、左も差せない。だが、稀勢の里は冷静だった。「落ち着いていけばどうにかなると思っていた」。御嶽海が構え直して出てきた瞬間、左下手をつかんだ。俵に足はかけたが、こらえるだけの力があった。右上手も引けば、これで万全。22秒7の時間をかけて、勢いに乗る挑戦者を退けた。

 意地でもあった。稽古場からの積み重ねを重んじ「本当の強さを求めてやっている。(本場所の)その場だけじゃない。毎日毎日が大事」と、巡業も積極的に土俵に上がる。一方で、親方衆に「本場所だけ力を出せばいいという精神」と苦言を呈されるのが御嶽海。力を認めるからこそ、その姿を嘆き、昨年の秋巡業では強引に引っ張り出した。対照的な2人。余計に負けるわけにはいかなかった。

 正月をはさみ、風邪がはやる時期。体調管理が難しい過去12度の初場所は最高でも11勝(12、15年)と、実は年6場所で最も勝てていない。だが、30歳の今年は稽古休みの年末や元日も「いつもはそんなにやっていない」というほど体を動かした。加湿器も「どこでも置くようにしている」と至る所に配備。体がガチガチにこわばっていた前夜は入念にほぐした。「自分が一番(自分の)体を分かっている」。初場所7年ぶりの初日から5連勝は、その結果だった。

 幕内669勝は、日馬富士に1つ差をつけての史上10位。だが、求めるのはその先の賜杯にある。6日目は先場所、苦杯をなめた正代戦。「明日は明日」と、序盤の戦いを振り返りはしなかった。【今村健人】

 ◆八角理事長(元横綱北勝海)の話 稀勢の里は相手(の作戦)に乗らなかった。よく我慢して押した。攻められるだけでなく自分も押し返したから左が入った。まだ序盤だから、余裕で行かなければ。白鵬は懐が深いし柔らかい。