九死に一生を得た。その崖っぷちを乗り越えると、追い風が吹いていた。中日8日目で、大関稀勢の里(30=田子ノ浦)が単独トップに立った。

 昨年秋場所で敗れている東前頭3枚目の隠岐の海(31=八角)との一番。立ち合いでもろ差しを許すと、左のおっつけも効かない。苦しい体勢のまま、前に出られた。絶体絶命。ただ、懸命に土俵を回ると、体の密着が緩んだ。そのすきに右手で首を抱えてひねりながら、左手で突き落とし。「いろんな展開がありますからね」。“崖”寸前の土壇場で生き残り、昨年夏場所以来の無傷の全勝で折り返した。

 すると、結びの一番で、全勝で並んでいた横綱白鵬(31=宮城野)がまさかの金星配給。一気に追い風が舞った。

 それでも、表情を崩さなかった稀勢の里。「また明日、しっかり集中してやります」。昨年春場所以来となる、中日での単独首位。この追い風に、今度こそ乗ることができるか。