14日目に初優勝を決めた大関稀勢の里(30=田子ノ浦)が、横綱白鵬(31=宮城野)をすくい投げで下し、14勝1敗で優勝に花を添えた。

 大関稀勢の里は平幕時代を含め、幾度となく優勝力士に次ぐ成績に終わった。特に2012年初場所の大関昇進以降は何度も賜杯に迫りながら、横綱白鵬らにことごとく阻まれてきた。

 いつのまにか「大一番に弱い」とのイメージが強くなり、「今度こそ」と周囲を期待させては裏切ってきた。だが稀勢の里の心は決して折れなかった。

 「逃げずに、いかにして日々の稽古を継続できるか。状態の悪い時こそ自分を追い込む。うまくいかなくても、絶対に諦めない」と愚直なまでに相撲に打ち込んだ。純粋でひたむきな姿が、ファンはもちろん、親方衆や他の力士らの胸を打ち、熱い視線を浴びてきた。

 不断の努力が綱とりへの機運を高めた。先場所はトップと2差をつけられての12勝で、今場所前は“ノーマーク”の存在だった。それが前半戦をただ一人全勝で折り返すと、初優勝と同時に横綱昇進へのムードが急に盛り上がってきた。

 自ら「持ってない男」と苦笑いする大関だが、今場所ばかりは運もあった。日馬富士と鶴竜の両横綱に続き、大関豪栄道も思わぬ休場。重圧のかかる13日目が不戦勝という珍しい事態も起きた。さらに14日目は1差の横綱白鵬が伏兵の平幕貴ノ岩に敗れ、初優勝が決定。八角理事長(元横綱北勝海)が「努力をしていれば、こういうこともあるんだな」と穏やかに笑った。

 神頼みや験担ぎにも頼らず、場所中は口数が極めて少ない不器用な男。あと一歩、あと1勝が遠かった稀勢の里が無心で闘い、初夢をかなえた。待望久しい日本出身横綱がいよいよ誕生する。