新横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)の誕生で、12日初日の大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)から17年ぶりに4横綱時代を迎える。注目の新横綱は、どんな影響をもたらすのか。「新横綱の風」と題して、さまざまな角度から分析する。第1回は経済効果。関大の宮本勝浩名誉教授(72)は9日、その額を22億円とはじき出し、春場所の活躍によってはさらに増大する可能性を示した。

 19年ぶりの日本出身横綱、17年ぶりの4横綱時代到来に日本列島が沸いている。春場所の前売り券は2月5日に販売から2時間16分で完売。稀勢の里の地元茨城・牛久市で行われた2月18日の昇進祝賀パレードには約5万人が集まった。さまざまな事象による経済効果を調べる関大の宮本名誉教授は、稀勢の里の横綱昇進による今後1年間の経済効果を22億4856万円と算出。「想定していた額より大きかった」と驚きの声をあげた。

 宮本名誉教授がまず着目したのは初場所中に、サンヨー食品から新発売された「サッポロ一番 田子ノ浦部屋監修 ちゃんこラーメン」(180円)の売れ行きだった。塩としょうゆの2種類とも、フタには稀勢の里の写真がプリントされ、既に100万食を出荷。13日から60万食が追加販売予定で、180円×160万食で2億8800万円。関連企業にも波及効果が見込め、1年間では10億1088万円に達すると予測した。

 さらに日本相撲協会の増収も推定。昨年は90日中88日で満員御礼が出ており、入場収入の大幅増は見込めないが、グッズや巡業、関連イベントでの観客が増えると予測。その効果は12億3768万円。これで計22億4856万円となる。

 宮本名誉教授は、高校野球で清宮幸太郎内野手(2年)を擁する早実が4強以上に進んだ場合は34億円、プロ野球でオリックスから阪神に移籍した糸井嘉男外野手には49億円の経済効果があると算出してきた。22億円の「稀勢の里効果」は少なく見えるが、約4万7000人収容の甲子園球場に対し、大相撲の会場は最大の両国国技館でも1万人余りで「会場の規模を考えると少ない額ではない」と言う。「春場所で稀勢の里が優勝でもすれば、CM依頼も来るかもしれない。効果は大きくなるでしょう」。新横綱の活躍次第で、さらに経済効果は増大しそうだ。【木村有三】

 ◆経済効果 大型イベント開催や事象によって一時的に発生する大きな需要のこと。消費者や企業が直接お金を払って購入する金額を示す「直接効果」。直接効果の原材料の売上増加額を示す「一次波及効果」。直接効果と一次波及効果に関連する企業、店舗などで勤務する経営者、従業員などの所得増加による消費増加金額を示す「二次波及効果」の、3種類の効果の合計額になる。