5場所ぶり38度目の優勝を狙う横綱白鵬(32=宮城野)が、まさかの黒星を喫した。平幕の勢に寄り倒され、物言いが付いたが覆らずに通算15個目の金星配給。横綱在位58場所で4日目までに相撲を取って2敗したのは、途中休場となった15年秋場所以来2度目となった。横綱稀勢の里は4横綱の中で、唯一の全勝キープ。

 白鵬にいつもの勢いがなかった。得意の右四つを狙いにいった立ち合い。普段なら強くすり足で踏み込む右足が浮いた。力は勢に伝わらず、右を差せない。おっつけられて、押し込まれた。土俵際、寄り倒されながら、苦し紛れの左小手投げを繰り出した。際どい勝負も、軍配は勢だった。

 勢が行司から懸賞金を受け取り、土俵から下りる寸前、物言いがついた。協議を終えた藤島審判長(元大関武双山)は「勢の手がつく前に、白鵬の体(たい)がなくなっており、行司軍配通り勢の勝ちとします」と場内アナウンスで説明。白鵬は一瞬、何が起こったのか分からないようなそぶりを見せた。結局、通算15個目の金星配給となってしまった。

 支度部屋で風呂から上がると「よく聞こえなかった。『取り直し』と聞こえた。出るのと手がつくのが同時だと思った。聞き間違えた」と説明。そして「荒れる春場所やな…」と自虐的にぼやいた。

 番付発表後、3回出稽古に行き、師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)も「最高の状態」と話すほどだった。だが、田子ノ浦部屋での出稽古で、右足裏を痛めた。「割れてる」という症状でテーピングが欠かせない。そして「いつもの立ち合いができない状態っちゃ状態」とももらした。横綱在位58場所で4日目までに2敗したのは、15年秋場所以来2度目。4横綱の幕開けは、白鵬を中心に荒れている。【佐々木隆史】

 ◆白鵬の4日目までの2敗 15年秋場所で初日に隠岐の海、2日目に嘉風と連敗し3日目から休場(碧山に不戦敗)して以来、横綱としては2回目。横綱で皆勤した55場所中、無傷の序盤5連勝は8割の44場所と、序盤は取りこぼさない白鵬が苦戦している。ちなみに7場所在位した大関で4日目まで2敗は07年初場所の1回。